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装幀という仕事 貝原浩--佐藤文明 2008年9月中旬号

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左上から『戸籍がつくる差別』1984年刊(新装版は1995年)、『ひとさし指の自由』(社会評論社)1984年(新装版は1985年)、『戸籍』(現代書館)1981年刊、『戸籍うらがえ史考』(明石書店)1988年

佐藤文明(評論家)
 戸籍の仕組みを疑い、新宿区役所(戸籍係)を辞めたのは一九七二年。「いつか戸籍の問題を世に問わねば」と、使命感を抱きながらも、伝え方の難しさに直面。途方に暮れてほぼ一〇年。現代書館から「ビギナーズシリーズで書いてみないか」と誘われたのはそんなときでした。イラストで伝える思想書として話題のシリーズ。「これならいけるかもしれない」と直感しました。もちろん、ナイスなイラストレーターと出会えれば、の話です。
 貝原浩、ぼくは彼の画才にも感嘆しましたが、それ以上に驚嘆させられたのが物事を把握する直観力のすごさ。『戸籍』は文章に絵をつけた本ではありません。ぼくらはおなじ場所でジャズ・セッションのように文と絵をキャッチボールしつつ、作品を作り上げた。
 幸せな経験でした。本は評判を呼び、戸籍の問題点を広く訴える成果を挙げます。『戸籍』の装丁は貝原ではないが、彼のイラストがそのまま使われているので印象的な表紙になっています。彼の装丁本としては『戸籍がつくる差別』『戸籍うらがえ史考』です。前者は運動と結ばれて版を重ね、新装版が出ました。問題の深さ厳しさをまず訴え、読者を獲得した新装版の装丁では広がりを持たせています。同様の装丁が『ひとさし指の自由』です。編集委員会編の本ですが、当方の編著。指紋押捺拒否運動のバイブルとして版を重ねます。新装版を含め装丁者は彼。ぼくらは運動を通じてもセッションしていたのです。