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装幀という仕事 貝原浩--池田浩士 2009年9月中旬号


池田浩士
一九九五年春に船出した「文学史を読みかえる」研究会は、九七年から二〇〇七までの十年間に、研究成果を全八巻のシリーズとして世に問うた。全巻を通じて黄色を主調とする大胆なデザインのカバーが特徴的で、日本文学業界では「現代の黄表紙」なる異名を取って注目されたという。この鮮烈な装幀を手がけてくれたのが貝原画伯である。どの巻も、そのテーマにピッタリの装画で、絵からもロゴからも構図からも、それが魂を込めた仕事の成果であることが、痛いほど伝わってくるものだった。残念なことに、第七巻が出たあと、画伯はこの濁世に私たちを置き去りにしたまま他界し、最終巻だけは、以前にあるポスターの原画として描かれた絵を、お連れ合いの世良田律子さんからお借りして、発行元・インパクト出版会の深田卓さんがカバーを仕上げた。
私個人が画伯と知り合ったのは八〇年代の初めごろだったが、一緒に本をつくろうという話を持ちかけてくれたのは画伯だった。八五年「9月13日金曜日」第一版発行と奥付に明記されている『仮設縁起絵巻』(現代書館)がそれである。爾来、画伯の装幀で刊行された私の本は、単著だけで七冊を数え、共著ではその数倍に及ぶ。とはいえ、画伯に装幀してもらう嬉しさは、じつは苦しさでもあった。中身の文章よりも、本のデザインのほうが、間違いなく優れているのだ。画伯なきいま、私の畢生の課題は、自分の余生が尽きるまでに、何とかして画伯の絵に追いつけるような文章を書くということだけである。