木村まき(元編集者)
遠目でもわかる。イロが、カタチが「貝原だぁ」と主張している。においが漂うどころではない。もちろん、引き出しは沢山あるのだが。
さて落合恵子著『こころの居場所』いかがですか。淡路町画廊での個展で、我が家に連れて帰りたいと思ったウツギの絵がカバー。一面に咲いているが静謐な世界。貝原さん自らこの作品を選んで仕上げた。手触りのよい用紙で、落合さん提唱の私権の思想と行動が心の奥まで届く。私が貝原さんに装幀を初めて依頼した本であり、本書を皮切りに、社では貝原装幀本が、続々ととめどなく誕生。
木村亨の『追悼本』と『全発言』。追悼本カバーと表紙には、すぐにはそれと気づかぬよう、人権の文字を大きく筆で書き、デザイン化してある心にくさ。カバーの肖像画は木村を偲ぶ会を開くにあたり描いていただいた絵を加工したもの。会には貝原画伯も出席。司会者の紹介に、黒いTシャツ姿でのっそり立ち、おじぎした。まさに含羞の人。
ぶ厚く重い『全発言』。渾身の装幀と本文デザインで支えきった。表紙のインパクト性は言わないでおこう。手に取りご自身の目でどうぞ。カバー写真は、木村が愛妻にだけ見せてくれた表情。
依頼から刊行まで、酒はつきもの。一献で済むはずもなく。ああなつかしや。
装幀については語り尽くせない。貝原浩。色使いの名人。つまり色男なんだね。金と力は――?



